『弱さの在処』


 

――その声を耳にするのは、いったいどれだけぶりのことだろう。

 

実時間では、彼女が眠ってしまってからそこまでの時間は経っていない。

せいぜいが一週間、知人や家族とだって、顔を合わせない時間としては普通にあり得る時間だ。――なのに、スバルにはそうは思えなかった。

 

何度も何度も、命を投げ打つことで時間を繰り返すスバルにとって、実時間など意味を持たない。魂の体感時間でいえば、スバルがその声に鼓膜を、心を震わされるのは、もっともっと莫大な時間を経てのことだった。

 

「――起きてください、スバルくん。顔を見せてくれると、嬉しいです」

 

地べたにうつ伏せになる身に、真上から言葉が降ってくる。

その声に込められた慈しみの感情が、親愛の熱情が、スバルの心を温かいもので急速に満たした。空っぽで、渇き切っていた心の器に、熱が染み入ってくる。

たった一言、優しい声をかけられただけで。

 

――いったい、どれほどの力を彼女は自分にくれるのだろうか。

 

「……嘘だ」

 

「いいえ、嘘じゃありません」

 

「いるはずない」

 

「スバルくんが望んでくれるなら、いつだって傍にいます」

 

「俺が一番どうにかしてほしいって、そう思うときに限って……いつも、お前がいてくれるなんてこと、あるもんかよ……そんな、都合のいいこと……っ」

 

「スバルくんにとって、一番都合のいい女でありたいと、常に思っていますから」

 

しゃくり上げる声が、みっともない弱音をポロポロとこぼしている。

なのに、触れ合う声は決してスバルを見下しも、見損ないもしない。

知っているのだ。彼女は。

 

スバルが弱くて、どうしようもなくて、何かに縋らなきゃ生きていけないほど脆くて、いつだって自信がなくて、迷い続けていることを。

そうやって強くあれないスバルを、それでも好きだと言ってくれる子だから。

 

「――レム」

 

「はい。スバルくんの、レムです」

 

顔を上げる。

涙でぼやけた視界に、青い色が浮かび上がる。

 

汚れた袖で乱暴に目をこすり、涙を蒸発させてスバルは見た。

眼前に立っている、少女の姿を。

 

愛おしい、レムの姿を。

 

「れむぅ……」

 

「はい、レムです。スバルくんが傍にいてほしいとき、手の届く位置にいるお役立ちメイドですよ」

 

「おま、え……」

 

小首を傾けて、軽口めいた態度でスバルを翻弄するレム。

そんな彼女の態度に、スバルは何を言うよりも先に、肺から空気が安らかに抜けるのを感じた。すとんと、胸の内にあった重たいものが落ちていく。

呼吸が楽になり、頭蓋の中で喚き立てていた小さい自分がどこかへ消える。

 

あまりにも、あまりにもあっさりと、救われてしまってスバルは呆然とする。

あれほどどうしようもないと、手詰まりだとばかり思っていた心が、ただ一人の女の子を目の前にしただけで、こんなにも簡単に、解かれてしまった。

 

「レムは、すげぇな……」

 

「ありがとうございます。スバルくんも素敵ですよ」

 

微笑みながらの言葉は、噛み合ってるようでいつものように噛み合っていない。

そんなやり取りにすら幸せを感じてしまい、スバルは堪えていたものが堪え切れずに泣きそうになる。

地べたにへたり込んだまま、目を伏せるスバルの前でレムが膝をつき、

 

「大丈夫ですか?疲れて、しまいましたか?」

 

「どう、だろ……俺は、疲れてんのかな……まだ何も、やり遂げてないのに」

 

こと、このやり直しの世界においてのスバルは、打ちのめされるばかりで何一つ正答に辿り着いていない。疲れた、なんて口にしていい立場じゃないと思える。

みんなもっと苦しんでいる。みんなもっと辛い思いをしている。どうして、みんなが苦しまなくてはならないのか――そんなのは、決まっている。

 

「俺が弱いからだ」

 

「――――」

 

「俺の力が足りないからだ」

 

「――――」

 

「俺がもっと強くて、もっと賢くて、もっともっとやれる男なら……みんな、あんな風に苦しんだり、悲しんだり、辛い思いをしなくて済んだんだ……」

 

スバルが全部、何もかもを一人でやってのけられるほど強かったなら、エミリアは過去と向き合って心を砕かれることも、四百年の孤独で擦り切れてしまったベアトリスを慰めることも、殺人者の凶刃にさらされるペトラやフレデリカを救うことも、大兎という脅威に命を脅かされる『聖域』の人々を守り抜くことも、がむしゃらに外敵を遠ざけようとするガーフィールと分かち合うことも、できたはずなのだ。

 

全部、全て、何もかも、スバルが悪い。

だから、その弱さの帳尻合わせは、スバルが自分の魂を削り切ってやらなくてはならない。

――そう、思っていたのに。

 

「俺は、誰も救えてなんて……いなかったのか?」

 

「スバルくん」

 

「俺が死んだ後にも世界が続いていたってんなら、俺は何度、何回、何人……みんなを、見殺しにしてきたんだ?」

 

「スバルくん」

 

「俺は何回、お前を死なせた?俺は何回、お前を……殺せばいいんだ?」

 

「――スバルくん」

 

体が奥底から震えてくる恐怖に、スバルは早口で己の罪を告解する。

吐き出し切って、今すぐに、沙汰を受けてしまいたかった。己で己の心が砕き切られる前に、傍にいる誰かに、それを断罪してほしかった。

もう間違わないと、そう決めておきながら、出だしの一歩目から間違った道を進むような大馬鹿野郎を、救えない馬鹿なのだと殴り飛ばしてほしかった。

 

「――――」

 

――なのに、罰を求めるスバルに与えられたのは、優しく包むような抱擁だった。

 

「れ、む」

 

「大丈夫です。大丈夫ですよ、スバルくん」

 

「なに、が……何も、大丈夫じゃ……ないだろ……っ」

 

何も、何一つ、スバルは成し遂げていない。

スバルがやらなければ、救えない人がたくさんいる。ひどい最期を迎えてしまう人がたくさんいる。レムだって、スバルが救わなくてはならない一人だ。

彼女にこそ、届かず、足りず、弱いばかりのナツキ・スバルを責める資格がある。

 

「お前は……俺を……っ!」

 

「――愛しています」

 

額を合わせられ、ただ、愛をささやかれた。

 

「――――」

 

言葉を封じられてしまう。

何も、言えなくなってしまう。

 

すぐ近くで、薄青の瞳が、スバルを真っ直ぐ見つめている。

その瞳に宿る、慈愛の感情の深さに、溺れてしまいそうになる。

 

「愛しています、スバルくん。――だから、全部、大丈夫なんですよ」

 

「こ、たえに……なってねぇよ……」

 

「なってますよ。どうして、レムがここにいるのか。どうして、レムがスバルくんを許すのか。どうして、レムがスバルくんを抱きしめるのか――全部、それだけです」

 

息のかかる距離で、レムの微笑がスバルの心を見えない掌で絡め取った。

動けない。微動だにできない。背中に回される、小さな手がギュッと服の裾を掴み、強く強く、一つになってしまいそうなほど強く、スバルを抱きしめる。

 

「大変だったんですね、スバルくん」

 

「――――」

 

「一人で、こんなに傷付いて……辛かったですよね、スバルくん」

 

「――――っ」

 

「もう、こんな悲しい思いばかりしなくて、大丈夫ですよ」

 

堪える作業に必死で、答えを返せないスバルにレムは甘い声音で続ける。

スバルの心を優しく解くように、頑なだった感情を溶かすように。

 

「スバルくんの辛いところ、苦しいところ、弱いところ、全部、レムが代わります」

 

「…………」

 

「スバルくんが守ろうって、戦おうって、やり抜こうって……そう思っていたこと全部、レムに預けてください」

 

「…………」

 

「何もかも全て、スバルくんが背負う必要なんてどこにもないんです。――全部、レムに任せて、今はゆっくり休んで、眠ってしまっていいんです」

 

「……お、れは」

 

「レムの大好きなスバルくんを、もう一度、見せてください」

 

頬に手を当てられて、スバルに顔を上げさせるレムが正面からこちらを見ている。

ふと、躊躇するように唇がすぼめられ、それからゆっくりと、レムの顔が近づいてくる。

何をしようとしているのか、何をされそうなのか、緩慢な意識でも理解できた。

 

すぐ近くに、息のかかる距離に、愛おしい少女の唇が迫る。

重ねて、絡めて、溺れて、それで、溶かされて、沈んでいっていいのだろうか。

 

――いいも悪いも、許してくれているじゃないか。

 

レムの言葉がどれほど、スバルの心に優しく染み入ったことだろう。

ささくれ立っていた感情が、手を差し伸べてほしいと紛糾する魂が、スバルの全てをわかってくれている彼女によって、今、再び救われる。

 

無力なスバルに、レムが手を貸してくれる。

脆いスバルの背を、レムがしっかり支えてくれる。

愚かなスバルの行く道を、レムが手を引いて導いてくれる。

 

それに甘えて、縋って、頼り切って――それで、正解に辿り着けるのなら。

一人で足掻き続けることに、どれだけの意味があるというのか。

 

擦り切れてしまって、自分の足場もわからなくなって、どちら向いて歩いていけばいいのかわからなくなってしまったから、だから、何もかも、諦めて、委ねて――。

 

『諦めるのは簡単です』

 

「――――」

 

『でも』

 

「――――」

 

『――スバルくんには、似合わない』

 

声が、聞こえた。

 

「――スバルくん?」

 

怪訝そうなレムの声が目の前から聞こえる。

それもそのはずで、彼女の顔はスバルが、触れ合う寸前だった互いの唇の間に挟んだ手によって遮られている。

 

甘く、絡め合うはずだった舌先の感触を遠ざけられて、レムの瞳がわずかに傷付いたような光をともして揺れる。

その揺れる光を、指の隙間から見つめて、スバルは言った。

 

「――お前、誰だ」

 

「え――?」

 

「お前は誰だって、そう、聞いてんだよ」

 

「スバルくん、何を……誰って、そんな……」

 

低いスバルの問いかけに、喉をひきつるような音を立ててレムが口ごもる。

瞳に淡く浮かんだ傷心が色濃くなり、表情に悲痛の跡が深く刻まれる。それはあまりにも、見ているスバルの胸を内から外から掻き毟るような感覚で。

その感覚を誤魔化すように、己の胸を上から押さえて、スバルは牙を剥いた。

 

「俺が……どうしようもないどん詰まりにいて、誰かにどうにかしてほしいって本気で思って、もうダメかもしれないって諦めそうになって……そんなときに、お前がいてくれたらって、本気で思ったよ」

 

「――――」

 

「お前ならきっと、こうやって行き詰まって、膝を抱えて、過ぎたことにウジウジと悩み続ける俺に寄り添って、優しくしてくれるって、そう思ったよ」

 

「――――」

 

「そうして、お前は俺の弱音を聞いて、泣き言を吐き出させて、涙も何もかも涸れるぐらいまで絞り出させて……」

 

「――――」

 

「――さあ、立ってくださいって、そう言うんだ」

 

触れた指の細さを、寄り添った肌の温もりを、与えられた愛の大きさを、ナツキ・スバルは全身全霊で覚えている。

だから、はっきりと、目の前にいるレムを――紛い物を前に、言ってやる。

 

「もう休んでくださいなんて、言わない」

 

「――――」

 

「諦めて、全部レムに任せてくださいなんて、言わない」

 

「――――」

 

「俺を好きで、俺も好きで、俺に優しくて、俺を愛してくれて――世界で誰より、俺に厳しくて、俺に甘くない女が、レムだからだ!」

 

跳ねるように立ち上がり、吠えたスバルは正面のレムを見据えて距離を取る。

膝立ちのまま、低い位置からスバルを見上げるレムは無言だ。だが、その表情は今もなお、スバルに拒絶されたことへの悲しみで溺れそうになっている。

 

「違います。聞いてください、スバルくん!レムは、レムは違うんです。ただ、レムはスバルくんが苦しんでいるのを見ていられなくて……だから、今はただ、辛いことを忘れて休んでほしいって、それだけで!」

 

「弱いところも見せる。脆いところだって見せる。どうしようもなく、ちっぽけな野郎なんだってところだって見せてやるさ。――でも、諦めるとこだけは見せねぇ」

 

スバルが英雄であるのだと、かつてのレムはそう言った。

レムの英雄であろうと、ナツキ・スバルはそう決めた。

 

その約束が交わされたときから、スバルはもう決めている。

――この世で、この世界で、ナツキ・スバルが弱いところを望んで見せることができるのは、レムの前でだけなのだと。

 

スバルが弱いことを知っていても、それをひっくるめて強くあろうとすることを信じてくれるレムの前でだけ、スバルは自分が弱いことを隠さずにいられる。

エミリアにも、ベアトリスにも、他の誰の前でも見せられない。

強くなくてはならないスバルの、弱いところはレムだけにしか見せられないのだ。

 

「だから、俺の弱さはレムのものだ。レムが俺の弱さを根こそぎ包み隠してくれるから、俺は代わりに諦めだけはしがみついてでも外に出さない」

 

「――――」

 

「出ていけよ、紛い物。――俺のレムの顔で、声で、俺を甘やかすんじゃねぇ!」

 

言い切り、スバルはレム――紛い物に拳を突きつける。

スバルの宣言、それを聞く相手は言葉を見失っている。そのまま相手は顔を伏せ、ゆっくりと、静かにその場で立ち上がり、

 

「き、聞いて……た、話と、ち、違う……よ?」

 

「あ……?」

 

小首を傾け、青い髪を揺らす紛い物が、つっかえつっかえ言葉を紡ぐ。

それを聞き、スバルが疑問の声を上げると――。

 

「――――」

 

目の前で、まるで像がぼやけるように、レムの姿が曖昧になる。

深夜のテレビに映る砂嵐のようなビジョンが視界を埋め尽くし、一瞬の世界ジャックの後、その場には別の人物が現れていた。

 

――初対面の人物だった。

 

薄紅の髪を背中の中ほどまで伸ばした、温厚――というより、気弱そうな佇まいの少女だ。目鼻立ちはそれぞれ整っているが、飛び抜けて美貌が引き立つ顔つきというわけではない。平凡な、人並みに可愛らしい容姿といったところか。

 

袖の長い白い服を着込んでいて、手首から先が外に出ていない手でそっと自分の頬を両方から挟み、おどおどとしながらスバルを見ている。

 

「お前は……誰だ?」

 

「し、『色欲の魔女』……カーミラ、だよ?はじ、はじめまして……ん」

 

問いに応じた少女――カーミラの答えに、スバルは思わず息を呑む。

『色欲の魔女』と少女は名乗ったのだ。つまり、

 

「この、わけのわからない空間は……エキドナの夢の中、か」

 

「合ってる、けど違う……かも。エキドナちゃんは、『試練』を見て、るから……『試練』はいつでも、夢、みたいな、うん……なの」

 

「イマイチ要領を得ないっつーか、いや、それ以前に……」

 

カーミラの話し方に苛立ちを覚えるスバル。自然、目つきが厳しいものになるスバルを見て、カーミラは一度、大きく体を震わせると頭を抱え込んでしまう。

 

「やめ、ぶ……ぶたない、で……」

 

「そんなことしねぇよ。そんなことはしねぇけど……さっきのは、何のつもりだ」

 

「さっき……の?」

 

「レムの格好を真似て、俺の前に立ったことだよ!あれが、お前の能力か!」

 

大罪の名を冠する魔女たちならば、いずれも尋常でない権能を持っているはずだ。

『色欲の魔女』も例外でないのなら、やはり権能持ちのはずである。仮に、先の変身がそうであるというのなら――、

 

「変身とは、他の魔女たちに比べたらずいぶんとオーソドックスな力だったな」

 

「へ、変身なんて、し、してない……よ?わ、私が、別の誰か、に見えたんなら……そ、れは……あ、あなたが、そう、見たがってたから、だよ?」

 

「なに?」

 

「だか、ら……私、は、あなたに、会いたくなか……なかったのに。え、エキドナちゃんが行ってって、そう言うから……嘘も、つかれたし……」

 

ぶつぶつと、そう呟くカーミラの言葉にスバルの中に苛立ちが募る。

喋り方も、目線の送り方も、こちらの視線を察して目を伏せる弱々しさも、何もかもが癇に障る。女々しい言い方も、拗ねたような物言いも、なんなのだ。

言いたいことがはっきりと伝わってこない上、自分がスバルにとってどれだけ大事なものを踏み躙るような真似をしたのかもわかっていない。

 

苛立たしい。腹立たしい。怒鳴り散らして、わからせてやりたい。

 

「お前……お前、自分が何をしたのかわかってやがるのか……?」

 

「エキドナちゃん、が……あ、甘やかせばいいって、言ったの、に……そしたら、うまくいくって……なのに、こんな風に……や、やだって、言ったのに」

 

「聞けよ……!!」

 

「み、みんなで……よってたかって、わ、私を、いじ、いじめるんだ……そう、なんだ。エキドナちゃんも、そ、そうなんだ。そうやって、ひどい……ひど、い」

 

「聞けって言ってんのが、わからねぇのか――!!」

 

叫ぼうとして、スバルは自分が肺から空気を絞り出して掠れた声を上げたことに気付く。気付いたが、それよりも身を焦がす怒りの方が大事ですぐに頭から消える。

息苦しさも、胸を掻き毟りたくなる苛立たしさの前には瑣末な問題だ。

いじいじ、うじうじ、泣き言を繰り返すその口を塞いで、スバルの抱える怒りや苦しみといった感情を全て叩き込んで、何をしたのか理解させて――。

 

「――それ以上は、命に関わるよ」

 

「――――ッ!?」

 

瞬間、スバルは耳元でささやかれるような声を聞いて正気を取り戻した。

 

途端、襲いかかってきたのは、無酸素状態が続いたことによる窒息寸前の苦しみと、見開きっぱなしになっていた瞳の渇きによる痛みだった。

 

「あ――あ、あぁ?」

 

「荒療治だが、舞い戻ってこれてなによりだ。――カーミラと、色欲の『無貌の女神』と向き合っていると、人は呼吸を忘れる。究極的には、心臓の鼓動さえ」

 

「えはっ、がふっ……は、はぁっ」

 

息苦しさに唾を吐きながら、地面に四つん這いになるスバルは思考を明滅させる。

だが、聞こえる声は確かに耳を通って、脳に意味を伝えてきていた。

故にスバルは袖で口元を拭い、この状況の何もかもをお膳立てしたはずの人物を見上げて、改めて牙を剥く。

 

「何を、何を企んでやがったんだ――エキドナ」

 

スバルの憎悪すらこもった視線を向けられて、白髪の魔女は自らの髪を撫でつけながら、自然な仕草でテーブルに頬杖をつき、

 

「決まっているだろ?――魔女なんだ。悪巧みだよ」

 

と、そう微笑んだのだった。